『ぜいとぅーん』58号 2016年1月27日発行
2015年9月末から、緊張状態が続いています。きっかけは、エルサレムのアルアクサー・モスクのあるハラム・アッ=シャリーフへのパレスチナ人の立ち入りが制限されたことへの抗議ですが、これまでの不満が噴出した、ということでしょう。イスラエル軍による検問所や道路封鎖も増加しています。
第3次インティファーダ(民衆蜂起)、エルサレム・インティファーダ、ナイフ・インティファーダと呼ばれたりもしています。しかし、組織的な抵抗運動ではなく、「一匹狼型」だと言われています。パレスチナ人が個人で、ナイフでイスラエル人を殺傷し(あるいは殺傷しようとし)、イスラエル警察・軍に即刻射殺される事件が多発しています。パレスチナ人の16歳の少女がユダヤ人入植者の女性を刺そうとしたとして、入植者に射殺された事件もありました(入植者は武装していることが多い)。
しかし「事件」の中には、ポケットに手を突っ込んでいただけの少年、家路を急いでいただけの女性ドライバーなどが含まれています。
ニュースを読んでいても、よくわからないことだらけです。例えば、西エルサレム(イスラエル側)で、パレスチナ人の少女2人が通行人をハサミで「襲い」数人が軽傷、イスラエル警察が少女を撃って1人が死亡、1人が重傷、というようなニュースはどう受け取っていいのか、わかりません(射殺していいわけがないのは確かですが)。
多くの「事件」を考察するのは無理ですが、生産者団体の地域のものをいくつか書きます。
10月始め、ガリラヤ地方の町、アフーラのバスターミナルでイスラエルの警備員を「襲った」とされる28歳のパレスチナ人女性が射殺されました。FBか何かで映像が回ってきて私も見ましたが、彼女は銃を持った人に何かを話していましたが、あっという間に射殺されてしまいました。
アフーラはユダヤ人の街ですが、シンディアナのスタッフの住んでいるパレスチナの村から近く、パレスチナ人も買い物に来ているところです。私も2年前に行った場所です(通信54号参照)。
1月1日、テルアヴィヴのパブでパレスチナ人が銃を乱射、2人死亡7人負傷。この事件の被疑者が、アラァラ村の自宅でイスラエルの警察特殊部隊に射殺され、5人以上が逮捕されました。
アラァラ村は、私たちにオリーブオイルを出荷してくれている「ガリラヤのシンディアナ」(以下、シンディアナ)の契約農家であるユーニスさんのオリーブ林の近くであり、ロハ地域にあるシンディアナのプロジェクト林の近くです。
何か「事件」があれば、すぐ射殺、というのが当たり前になってしまっています。本当に「事件」かどうかわからなくても。「事件」を起こしていなくても、パレスチナ人というだけで、危険な人と思われてしまう。
1月には、ギリシャからイスラエルの向かう飛行機に、パレスチナ人(イスラエル国籍)が同乗することを他のイスラエル人が拒否し、パレスチナ人乗客が出発前の飛行機から降ろされてしまう、ということも起きました。
15年ほど前、私がパレスチナ(ヨルダン川西岸地区)に留学していた頃のことです。ヘブロンのイブラヒームモスクの入り口で、検問をしていたイスラエル軍の兵士に、眉毛切りばさみと手鏡を取り上げられました(預けさせられた)。眉毛切りばさみの「刃」は1cmもなく、眉毛以外は絶対に切れません。手に刺したってかすり傷1つつきません。手鏡も10cm四方くらのものでしたが「監視カメラに鏡を向けると写らなくなるから」と言われました。「セキュリティのため」と言い、それ以上の説明は一切ないので、本当にセキュリティ上の決まりなのか、嫌がらせなのか、さっぱりわかりませんでした。
いま、パレスチナ人はカバンに「ナイフ」が入っていただけで射殺されています。