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パレスチナ・オリーブでは、素材の質や効能はもちろん、
誰が、どんな状況で、どういう方法で作ったものなのかといった製造背景をクリアにしています。
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生産者パートナーと協力し、ともに生きる
誰もが大切にされる社会を作っていきます。

パレスチナ・オリーブは、パレスチナ北部のガリラヤ地方(1948年からイスラエル領)のオリーブオイルなどの食品、ヨルダン川西岸地区(パレスチナ自治区)ナーブルスのオリーブ石けん、ヨルダン川西岸地区(パレスチナ自治区)イドナ村の刺繍製品を扱っています。

実際に食べて使って納得したものを輸入し、現地を訪問・交流しながら活動しています。

イベント

『ぜいとぅーん』57号 ユダヤ人国家法案

『ぜいとぅーん』57号 2015年8月27日発行

早尾貴紀(寄稿)

 イスラエルでは、昨年2014年12月にビンヤミン・ネタニヤフ首相が国会を解散させ、翌2015年3月に総選挙を実施、5月にネタニヤフが率いるリクード党を中心とする右派連立内閣を発足させ、ネタニヤフが首相の地位にとどまりました。その解散の直接的なきっかけとなったのが、14年11月末に閣議決定し国会で審議することになった、いわゆる「ユダヤ人国家法案」でした。解散になったため、この法案は新しい国会での争点になってきます。

成文憲法のない二民族国家イスラエル

 Israeli Nationality Billとか、Jewish Nation-State Billと呼ばれるこの法案は、イスラエルが「ユダヤ人の単一民族国家」であるということを、ユダヤ宗教法をもとに定めるものです。イスラエルがユダヤ人国家であることは、ユダヤ人の側からすれば自明のことであったはずですが、しかし、今回の法案ほど明確にユダヤ人国家を規定したものは、これまで存在しませんでした。実は、イスラエルには「国家のカタチ」を示す憲法(Constitution)が存在しません。いくつかの基本法的なものをまとめて憲法に替わるものとしています。そのなかで、「独立宣言」と「ユダヤ人帰還法」と「世界シオニスト機構法」が、ユダヤ人国家を定めています。それと同時に、独立宣言には、「宗教・人種・性にかかわらずすべての住民に対して、社会的・政治的権利の完全な平等を保証する」とも明記してあります。当然ここで念頭に置かれているのは、建国時から現在までつねに総人口の20パーセント前後を占めているイスラエル国籍のパレスチナ人のことです。

 イスラエルの総人口は、2015年時点で約800万人で、そのうち20パーセントの約160万人がパレスチナ人(ムスリムかキリスト教徒)です。ユダヤ人に比べれば少数派ではありますが、決して小さな数字ではありません。そして何より、このパレスチナ人はこの地の「先住民」なのです。だからこそイスラエルといえども、「すべての住民は平等」と宣言し、公用語にヘブライ語だけでなくアラビア語も形式的には加えなければならなかったわけです。こうして1948年の建国以来67年間、まがりなりにもやってきましたが、今度の法案はこれまでの現状維持を捨てて、大きな変更をあえてもたらそうとするものです。すなわち、「ユダヤ人の単一民族国家」と規定することによって、先住民としての集団的なパレスチナ人の社会的・政治的権利は認められず、あくまで個人的な権利が認められるのみとなります。

背景としての和平失敗と反アラブ感情

 いまユダヤ人国家法案が出されてきた背景には、和平プロセスの失敗があります。1993年のオスロ和平合意で被占領地(ヨルダン川西岸地区とガザ地区)にパレスチナ人国家を建設する方向性だけは確認されましたが、ユダヤ人入植地、東エルサレム、難民問題などでイスラエル側が譲歩せず、パレスチナ人の不満が爆発したのが2000年からの第二次インティファーダでした。被占領地のパレスチナ人の不満は、イスラエルと協力し当時パレスチナ自治政府を担っていたPLO(パレスチナ解放機構)にも向かいました。入植地の拡大を止めることもせず、国際援助漬けで腐敗したPLOに対する批判票が、反オスロ・反イスラエルを明確にしていたハマスに流れて、2006年の選挙でハマス政権が被占領地に誕生しました。

 このことが繰り返されるガザ攻撃の原因にもなるなど、和平交渉は挫折してしまいました。イスラエル国内のユダヤ人社会には、第二次インティファーダとハマス政権誕生以降、「抵抗するパレスチナ人とは和平交渉をしない。武力で黙らせる」という世論が広まったのです。さらにその反アラブ感情はイスラエル国内のパレスチナ人にも向けられるようになり、さまざまな差別的政策も公然と取られるようになりました。なかでも、ガリラヤ地方(イスラエル領)のパレスチナ人と結婚したヨルダン川西岸地区(被占領地)出身のパレスチナ人に対して、婚姻による永住権を剥奪し、西岸地区へ強制送還するようになったことが象徴的です。結婚後、永住権を得てイスラエルで家族と暮らしていたのに、西岸出身者だけが追い出されたのです。

中道左派の危機感

 この法案に対して、10人程度のパレスチナ人議員らが反対したのはもちろん、それだけでなく、左派・中道のユダヤ人政党の議員らも懸念を表明し、とりわけ連立政権に参加していた中道政党がネタニヤフの率いる右派リクード党と袂を別ったため、連立が解消され議会解散となったのでした(危機感から選挙ではアラブ系の4党の統一会派が初めて形成され、多党乱立のイスラエルでは第三党となりました)。

 左派、あるいは中道のユダヤ人政党がこのユダヤ人国家法案について懸念していることは、2点。ひとつは、「中東で唯一の民主主義国家」を自称するイスラエルの「民主主義」が損なわれること。これまでイスラエルは「ユダヤ的かつ民主的」であると謳ってきました。もちろんこれは矛盾する表現であり、「ユダヤ」を立てればパレスチナ人が否定され民主主義が嘘になり、「民主主義」を立てればユダヤ人の特権が否定されます。実際には制度的なパレスチナ人差別がたくさんあり、ユダヤ人にとっての民主主義でしかないわけですが、しかしイスラエルは矛盾を承知でこう自称することで内外に対しバランスをとってきました。今回の法案で、とうとう「民主主義」の看板が外されてしまうと指摘されています。

 懸念のもうひとつは、世俗的な(宗教的でない)ユダヤ人の立場が損なわれること。ユダヤ人国家を支えてきたシオニズム運動はそもそもヨーロッパの世俗的ナショナリズムから生まれた非宗教的な運動で、世俗的なユダヤ人が中心に担ってきました。世俗政治だったからこそ、欧米世界との親和性も保ててきた面があります。しかし、ネタニヤフはこの法案で世俗派を振り切って、いくつかの右派的な宗教政党と手を組みました。実際、5月に発足した新連立内閣は、見事なまでに右派・極右・宗教の政党で結集しました。

 この宗教右派の内閣と、中道左派およびパレスチナ人の野党が、この法案をめぐって対決していくことになりますが、もしユダヤ宗教法に基づくユダヤ人国家法が成立することにでもなれば、これが事実上の「新憲法」として位置づけられ、国家の性格も大きく変化することになると見られています。そのため、パレスチナ人にとってだけでなく、世俗派のユダヤ人にとっても重大な問題になっているのです。

 また、イスラエル・パレスチナの「和平交渉」の中で、イスラエルは「イスラエルをユダヤ国家として承認すること」を求めており、パレスチナ政府は拒否しています(「イスラエルを承認すること」ではなく、「イスラエルをユダヤ人国家として承認すること」が問題です)。

 

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投稿日:2016年01月16日(土)
この記事のURL:http://www.paleoli.org/?eid=129