お知らせ
通信を書き終わる直前に、イスラエル・アメリカのイラン攻撃が始まりました。3月1日現在、中東の港、空港がほとんど閉まっている状況です。この状況が続けば、生産者さんたちは出荷ができず大打撃を受けることになります。
在庫状況
ザアタルは品切れ中です。オリーブオイルの在庫はまだありますが、5月には売り切れる可能性があります(賞味期限2027年4月)。
新シーズンのオリーブオイルとザアタルは5月頃に入荷予定でしたが、イスラエル・アメリカのイラン攻撃の影響で現地の港を出られず、遅れる見込みです。
オリーブ石けんはベーシック、ザクロ入りともに十分あります。
新シーズンのオリーブオイル
ガリラヤ地方のバルネア種とヨルダン川西岸地区コフル・カドゥーム村のナバーリ種のブレンドになります。青リンゴや草のようなさわやかな香り、まろやかな舌触り、喉にくる辛みを感じました。現地で味わいましたが美味しいです!
オリーブオイル 蓋の不具合
パレスチナ・オリーブでは全瓶の検品作業をしておりますが、昨年入荷した瓶には、「空回りして蓋が開かない」「開いても閉まりにくい」という不具合がいつも以上に出てしまいました。
問題の瓶と蓋については納入先を変更し、蓋締め機械の設定方法を変えるなど改善を図っています。
蓋の不具合は以前からの課題でありご迷惑をおかけしておりますが、シンディアナとの連携を進めて良品を目指していきます。
値上げ
心苦しいお知らせですが、新シーズンのオリーブオイルから、販売価格を5~10%値上げする予定です。
1)2024年雨季に雨が少なかった事に加え、オリーブの木は収穫の多い表年、少ない裏年を一年ごとに繰り返し、2025年は裏年でした。また、イスラエル軍による農地への立入禁止、道路封鎖による移動制限、ユダヤ人入植者の暴力などで収穫できない地域もありました。
現地のオリーブオイル価格は1.5倍近くになっています。
2)円安ドル高が続いていますが、イスラエルの通貨シェケルがそのドルに対しても高くなっています。2024年は1シェケル=約40円、現在1シェケル=約50円です。
*物価:パレスチナは中央銀行も独自通貨も持てずイスラエルの通貨シェケルを使っています。イスラエルもパレスチナも物価は日本の1~1.5倍。
人気のFOVERO商品、今年はTシャツ5種類(ワンサイズ)とリングノート5種類が4月頃に入荷予定です。パレスチナのストリートファッションブランドで、デザインもTシャツの縫製もすべてパレスチナで行っています。
厚い表紙のリングノートは裏表紙にもデザインが描かれ、全ページに罫線とFOVEROのロゴが入っています。しっかりして、おしゃれ。
詳細は、入荷後、パレスチナ・オリーブのサイトやSNSに掲載します。オリーブオイルや石けんなど、他の商品と一緒にご注文いただけます。
・Tシャツ 5,000円(税込5,500円)
・リングノート 1,600円(税込1,760円) 大きめのA5サイズ(縦22x横15cm)
イスラエル:1948年に建国を宣言。イスラエルの総人口950万人の約21%、200万人がパレスチナ人(イスラエル建国後も自分たちの土地に住み続けた)。法的・制度的にユダヤ人が優位の国家・社会のなかでマイノリティーとして暮らす(「アラブ」と呼ばれることも多く、通信では便宜的に「アラブ・パレスチナ人」と書く)。イスラエルではほとんどの地域で、ユダヤ人の町、アラブ・パレスチナ人の村や町、というように住むところが分かれている。
ヨルダン川西岸地区:パレスチナ自治区。1967年からイスラエルが軍事占領。1993年のオスロ合意以降の交渉で主要な町はパレスチナ自治政府の管轄となったが、それはヨルダン川西岸地区の18%の面積に過ぎない。パレスチナ人の人口は約330万人。約150ヶ所のユダヤ人入植地に70万人以上のユダヤ系イスラエル人が住んでいる。
*1948年以降エルサレムはユダヤ側の西エルサレムとパレスチナ側の東エルサレムに分断されていたが、1967年にイスラエルは東エルサレムを占領し併合を宣言。
「ガリラヤのシンディアナ」(以下「シンディアナ」と省略)の事務所があるコフル・カナ村はナザレに近い、クリスチャンとムスリムが住むアラブ・パレスチナの村です。
オリーブの収穫減
契約農家さんであるアーラ村のユーニスさん、デイル・ハンナ村のアベッドさんは、出荷できる程の収穫量がなく、自家用の分しか確保できない状況でした。
ヨルダン川西岸地区のコフル・カドゥーム村農業協同組合も収穫量は減り、シンディアナには6割弱(26トン)の出荷でした。
パレスチナ・オリーブ向けには、このコフル・カドゥーム村と、ガリラヤ地方ムガール村近郊のオリーブオイルのブレンドが届きます。
ガリラヤ地方のオリーブオイルは、アラトゥール家管理のオーガニックオリーブオイルです。
Cooking without Borders
シンディアナの加工場・事務所の上階には、シンディアナの製品を販売するだけでなく、ワークショップも行えるビジターセンターがあります。
2023年10月以降、国内外からの訪問客が全くなく、ワークショップも開催できずにいましたが、今回アラブ料理を学ぶお料理教室が再開され、私も参加しました。
ガリラヤ地方レニ村在住のプロのシェフ、ナスリーン・ムナスラさんが講師。ナスなどの野菜をくりぬいた中にお米や羊のひき肉を詰める「マハシー」や、パン生地の上にひき肉やほうれん草をのせて三角にたたんで焼く「ファターイル」、スープ、フルーツサラダを作りました。
参加者はユダヤ系イスラエル人が約20人、アラブ・パレスチナ人は約5人。料理の先生や、シンディアナのスタッフたちはアラブ・パレスチナ女性です。一日かけて一緒に料理して交流を楽しみました。
参加者の一人のユダヤ女性は「この雰囲気には深く感動しました。特に、この扉の外には狂った世界が広がっているのに、ここにいるとまるで別世界にいるような気分になるからです。複雑な現実の中で、このワークショップは正気と友愛と喜びの島でした」と話していました。
通常、ユダヤ人がアラブ・パレスチナの町村に来ることはなく、終了後にシンディアナのスタッフは「料理教室はユダヤ系イスラエル人がアラブ・パレスチナの村に来るきっかけになる」と言っていました。
正直なところ「(ともに生きる未来を作っていくための)まだ最初の一歩か…」という気持ちにもなりましたが、地道な取り組みこそ大切なのでしょう。
また、頑張ってイベントを準備していたスタッフたちに尊敬の気持ちを抱きました。
シェファ・アムルー村の食品工場
ナザレとハイファの間に位置するシェファ・アムルー村。紀元前からの古い歴史を持つ、ドルーズ、ムスリム、クリスチャンの混合村であるこの村の食品工場でザアタルの原料を製造しています。
ナザレ近郊で栽培されたザアタル(ハーブ自体もミックスしたものも「ザアタル」と呼ばれます)を、この食品工場で不純物を取り除き、乾燥してから挽いて粉にします。シンディアナでそのハーブとスパイス等をブレンドし、瓶詰めしています。ブレンド具合には「我が家の味」(こだわり)があります。
工場で責任者のアラア・ナフーレさんに話を聞きました。50年前、コーヒー豆の焙煎から始まり、ナッツ類のロースト、スパイスやザアタル…と仕事を広げていったそうです。食品の中でも、地元(アラブ・パレスチナ、ガリラヤ)の食文化に根ざすものだけを製造しています。衛生的で品質管理もしっかりしている、近代的な工場でした。
工場で働く人の大半が村の人。高校卒業後、ここで働いてお金をためて大学に行く若者も多いそうです。
パレスチナの困難な状況の中、各地で「生まれ育った町で仕事を生み出そうと精力的に活動している」人たちに出会います。この状況で情熱を持って活動していくことは大変なことだと思うのですが、アラアさんにお会いして「ここでも出会った!」と感銘を受けました。
コフル・カドゥーム村農業協同組合
ガリラヤのシンディアナの契約農家のうち、ヨルダン川西岸地区北部にある農業団体です。
本来ならばナーブルスの町から15分で着く距離ですが、道路封鎖や検問所があり、乗合タクシーを乗り換えて1時間弱かかります。コフル・カドゥーム村の人たちは、道路封鎖への抗議デモを毎週金曜日に行っていましたが、軍も入植者もより暴力的になり危険なため、現在はできなくなりました。
この農業協同組合は占領下での困難を乗り越えるために20年前に作られました。農作物の品質を上げるため、みんなで学び実践しています。フェアトレード認証や有機認証など各種の認証も取っています。
今回の訪問で、農業協同組合の方たちが、農業活動だけでなく村のコミュニティに貢献していることがわかりました。
学校訪問
農業協同組合の案内で、村の4つの学校(女子小学校、男子小学校、女子中高等学校、男子中高等学校)全てを訪問し、先生たちからいろいろお話を伺うことができました。「ガリラヤのシンディアナ」のフェアトレードプレミアムが、女子中高等学校のグラウンド整備に使われたという繋がりです。
ヨルダン川西岸地区の公立学校は、いま週3日しか授業を行えていません。パレスチナ自治政府の予算不足で、先生の給料が十分に払えないからです。1ヶ月の給料が3000シェケル(約15万円)が1500~1800シェケルになっています。
村の学校では「宿題やオンライン授業で補っているけれど、生徒の基礎学力が落ちている」「週3日では学習カリキュラムが終わらせられない」と先生も大きなストレスを抱えているそうです。
また先生方からは「安全な環境を作りたいんだ」と言われました。
「学校の門(入口)の場所を変えて、入植者が来にくい通学路にしたい」「女子用のトイレを改善したい」「先生たちの休憩所、給湯室を作りたい」「中庭を整備したい」 つまり、学校を子どもたちや先生が安心できる、リラックスできる場所にしたいということでした。それだけ、外の世界が緊張に満ちているということなのでしょう。
コフル・カドゥーム村の近くには、この村の土地を奪って作られたケドミーム入植地があり、入植者からの嫌がらせ(暴力)があります。
そして、政府に予算がないので、学校の改修に必要なお金を自分たちで集めています。農業協同組合も、毎年、活動費の一部を学校に寄付したり、学校の要望を必要な部所・団体に繋いだりしています。
村の人たちが何とか皆で協力して工夫して取り組んでいる様子、志を知ることができました。
*自治政府の予算不足
「イスラエルが代理徴収してパレスチナ自治政府へ送る税の送金を止めているため」だと聞きます。各国からの寄付も減っているようです。
訪問後には、農業協同組合メンバーのご家族が料理してくれた「ムサッハン」を一緒に頂きました。パン生地に鶏肉、炒めた玉ねぎとアーモンドを乗せた伝統的な料理で、オリーブオイルとスマックがたっぷりかかっています。パンに味が染みていて美味しかったです。
会食中に、女子中高等学校が早速、私たちの訪問についてfacebookに投稿していることに気がつきました。訪問によって何かにつながらないか…学校の期待が大きく、何ができるか考えさせられました。
ナーブルスは、ヨルダン川西岸地区北部にある大きな町です。石けん工場はナーブルスの郊外にあります。
プロフェッショナル・チーム
石けん工場で働いているのは約15人(女性は4人)。品質管理責任者のアミーラさんは大学卒業後すぐに働き始めて丸4年になります。もうすっかり工場主のマジュタバさんの右腕となっているそうです。息子さんもオーガニックコスメ部門などで頑張っています。若い人たちが育ちしっかり支えている様子がわかりました。マジュタバさんは「プロフェッショナル・チームができた」と言っていました。でもSNSでの発信が課題だ、とのこと。
わかります! オリーブ石けんの良さを写真や動画で伝えるのは難しいと感じます。オリーブオイルなら料理の写真や言葉で美味しさを伝えられる。刺繍製品は見ただけで美しい。石けんは製造工程は企業秘密もあるからあまり見せられないし、しっとりすべすべ感は写真に写らない! 初めてこのオリーブ石けんを使った人に「石けんすごくいいねえ」としみじみ言われることが多いのに、石けんの良さを十分に伝えるのは難しいです。
オリーブ収穫減の影響
オリーブ石けん製造のためのオリーブオイルも不足する見込みで、オリーブ石けん原料に、中東やヨーロッパからの食用ヴァージンオリーブオイルも使うことになりました。高品質なオリーブ石けんを作るには、高品質なオリーブオイルを使うことが大事なので、品質はしっかり吟味しています。
*オリーブが収穫減でパレスチナ自治政府はオリーブオイルを5000トン輸入することを決めました(パレスチナ農家さんを保護するため、通常は政府が食用オリーブオイルの輸入を制限しています)。
ヨーロッパに配送拠点
ヨルダン川西岸地区の封鎖状況では、まとまった数の石けんをタイミングを見て出荷する、という方法しかないため、これまで、石けん工場では海外からの100個、200個というような少量の注文には対応できずにいました。このためスペインに配送拠点をつくり、ヨーロッパ向けの少量の注文に対応する事になりました。
また、他の生産者団体・会社でも海外への輸出に活路を見出そうとしているところが増えているそうです。ヨルダン川西岸地区に仕事がなく、人々に購買力がないのです。
石けん工場主のマジュタバさんは20年以上の海外販売の経験を生かして、他の人たちの相談に乗り、仲介をしています。デイツなど食品の輸出もすでに行ったそうです。
検問所
石けん工場は、ナーブルスの町と隣接するベイト・フリーク村の間にあります。ベイト・フリーク村から村の外に出られる道は一本だけで、そこに検問所があります。ナーブルスの町から石けん工場に行くにはこの検問所を通るしかありません。しかしこの検問所が西岸地区でも最も困難だと言われている検問所の一つで、検問所が閉まっていて通れない日が多く、開いている日でもイスラエル兵によるチェックに時間がかかり、通るのに数時間かかることがあり、石けん工場を苦しめてきました。
今回、工場を訪問する前に「(石けん工場近くの)検問所の状況はどう?」と電話で訊いたら「実は…2週間前から検問所に兵士がいないんだ!」と嬉しそうな声で教えてくれました。それは大ニュース! 良いニュース!
2年半ぶりにその検問所からイスラエル兵が撤退し、すんなり通れるようになったのです。
「明日またどうなるかわからないけれど」「ラマダーンになるとイスラエル軍が締め付けてくることが多いからなあ」なんて言っていましたが、ちょっとホッとしているように見えました。
それが…イスラエルとアメリカによるイラン攻撃が始まり、3月1日時点ではヨルダン川西岸地区は、全ての町村が封鎖されてしまいました。検問所・道路が通れず、村や町の外に行けないのです。結局ベイトフリークの検問所が自由に通れたのは1ヶ月半だけでした。
イドナ村はヨルダン川西岸地区の南部ヘブロンの町に近くイスラエルとの境界線沿いにあります。
刺繍担当の女性たちは、事務所に材料の布や刺繍糸を取りに来て、自宅で刺繍をして事務所に持っていきます。その刺繍された布を縫製担当者がバッグ等に仕上げていきます。
イドナ村女性協同組合のメンバーがまた増えていました。約60人。2023年10月前は30人だったので倍増です。最悪の経済状況が続く中で、仕事を求める人が多いのです。「私たちは、あちこちから注文があってとても助かっているけれど、村の状況は大変」と、学校が週3日しかないこと、仕事がなくて隔離壁をよじ登ってイスラエルに出稼ぎに行く人たちのことなど、いろいろ様子を教えてくれました。
この刺繍団体の製品の品質の良さが評価されているのでしょう。海外に販売している他、イスラエル内のパレスチナ人の町、ヤーファ、ハイファ、ナザレのお店からアラブ・パレスチナ人が直接仕入れにも来ています。
打ち合わせでは、既存の製品の変更・改善や、新商品の提案などをしました。
バッグチャーム(大きめのキーホルダー)の作成をお願い中です。
私がイベントでよく着ている刺繍チュニックも別の色を注文してきました。私に何色が合うかな?と鏡の前で布を合わせてみたりして、楽しかったです。
仕事の後は「マクルーベ」をいただきました。鶏と揚げた野菜の炊き込みご飯。入れる野菜はいろいろですが、今回はカリフラワーとヒヨコ豆入りで美味しかったです!
カランディア検問所(エルサレム行政区からヨルダン川西岸地区北部に行くときに通る大きな検問所)に近い、FOVEROの事務所を訪問しました。
地元の印刷工場や縫製工場と協力して仕事を作り出しています。パレスチナには布を作る工場がないので、Tシャツの布地は主にトルコから輸入。ここでは、布を切って縫ってデザインを施して製品に仕上げていきます。
1997年生まれのジャウダードさんが2019年に立ち上げた会社で、働いている人たちも若い人が多く(連携している工場も含めると)40人が働いています。地元のデザイン学校を卒業したという女性が新たに加わっていたほか、学生インターンの女性も2人来ていました。
訪問は3回目。2024年にエコバッグ、2025年はTシャツ、今年はTシャツとリングノートを注文してきました。
事務所では、まだWebサイトに載っていない新デザインや新製品を選べるのも嬉しいところ。リニューアルしたリングノートは20種類のデザインから5種類を選びました。
FOVEROは、直営店がラマッラーに2店舗、エルサレムに1店舗ありますが、西岸地区の経済状態が悪く購買力がないので海外に販路を求めるしかない、というのは共通した事情。代表のジャウダードさんはドバイに1ヶ月売り込みに行って帰ってきたところでした。
オンラインショップで日本から直接注文もできます。日本から多くの注文が来ていることを、FOVEROのスタッフはとても喜んでいます。
FOVEROのデザインは、一目でわかりやすいものではありません。パレスチナの自然や文化、暮らしをカッコ良く表現しながら、それぞれ深い意味を持っています。一つ一つのデザインの意味を聞くと勉強になります。
今回初めて見て印象的だったデザインは、「花も抵抗する」というもの。「彼女の花(バラ)さえも抵抗する。オリーブの木もイチジクも抵抗する」という歌詞から、アラビア語と花、オリーブを描いたデザインが作られました。ナザレ出身、ドイツ在住のパレスチナ女性歌手ロラ・アーザルさんとのコラボ商品です(楽曲はレバノンのファディ・ザラケト)。Youtubeのロラさんの公式チャンネルで歌を聴きましたが、とても美しい歌声と曲でした。
ヘブロンの革製品
パレスチナには、オリーブオイルやオリーブ石けん、刺繍製品の他にも素敵な特産品がたくさんあります。
ヘブロンはヨルダン川西岸地区最大の町で商業・産業の中心地です。伝統的には革製品や磁器が知られています。
たまたまInstagramで見つけたブランド、Tiger Leatherの手刺繍付き革バッグが素敵だったので、工房を訪問しました。ショップが併設されている大きな工場だと思い込んで探したらなかなか見つからない。5人でやっている小さな工房でした。2019年に立ち上げた若い人たちの会社です。
ヘブロン南部にあるアッサムーアで革を製作(牛と羊)、刺繍はドゥーラ村に依頼、ヘブロンの工房でバッグに仕立てています。
なんと最初はイドナ村女性協同組合に刺繍の話が来たそうですが、イドナの女性たちは自分たちの製品制作で手いっぱいなので、隣のドゥーラ村に話を回したそうです。
ヘブロンでは輸入の革で製品を作っている工場も多いようですが、Tiger Letherはヘブロン製の革を使っていると言っていました。
アッサムーアは、ユダヤ人入植者が暴力的にベドウィンコミュニティを追い出しているダハリーヤやマサーフェルヤッタに近い場所で、アッサムーアも入植者に襲撃されているようです。そのなかで素晴らしい革をつくっている革工場に、今度ぜひ行ってみたいと思いました。
Tiger Leatherは、オンライン販売でアメリカからの注文が多いそうです。商品は工房からの直送ではありません。
革製品の関税が高いので、私たちで輸入販売の予定はないのですが、自分用に刺繍のついた革のショルダーバッグを購入しました。
おしゃれカフェ
パレスチナのあちこちの町で、カプチーノにケーキ、エクレアなどを出すおしゃれなカフェが増殖し、若者で混み合っていました。パソコン仕事をしている人もちらほら。いくつかのカフェに入ってみました。ケーキは見た目は素敵でしたが、私にはちょっと甘すぎでした。
そして、おしゃれカフェには抹茶ラテもありました! 中東でも抹茶ブームです。
ビジネス関係者は「ヨルダン川西岸地区に仕事がないから、手軽に始められるカフェを出す人が増えたのだ」と言っていました。
イスラエルへの出稼ぎと逮捕
イスラエルへの出稼ぎが許可されなくなって2年以上。ヨルダン川西岸地区から約4万人が「違法」にイスラエルで働いていると言われています。
ロープを使って8mの隔離壁を乗り越えます(壁の上には巻かれた有刺鉄線があります)。壁を登っているのを見つかれば射殺されるリスクがある危険な行為です。「違法」に働いているのが見つかれば逮捕もされます。
大半は、逮捕されて2-3ヶ月勾留後、罰金を支払って解放されます。その後2年間は就労禁止になります。
それでも、西岸地区に仕事はなく、リスクは高くてもイスラエルで働ければ、ある程度の収入になります(許可なし労働なのでブローカーや雇用主に搾取されるお金もありますが)。イスラエルでは、週5日フルタイムで働いた場合の最低賃金は1ヶ月6,248 シェケル(約32万円。シェケル高で物価は日本の1.5倍以上)です。
ニュースとしては知っていましたが、今回の訪問中に、家族が逮捕された、という人に出会って深刻さを身近に感じました。
*イスラエルへの出稼ぎ
パレスチナはもともと豊かな土地で農業や牧畜、製造業、商業がさかんな地域でしたが、占領によってもともとの産業は衰退させられ、人々はイスラエルへの出稼ぎに現金収入を依存するようになりました。
2023年10月時点で、ヨルダン川西岸地区からイスラエルに出稼ぎ(建設業が中心)に通っていたパレスチナ人は約15万人、ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地の工場や農場で働いていたパレスチナ人は約5万人。20万人というのはヨルダン川西岸地区の労働人口90万人のうちの約22%になります。
エッセンシャルワーカー(医療・食料など)8,000人と入植地の労働者の多くが仕事に復帰していますが、大半の労働者は労働許可はあってもイスラエルに行く検問所を通る許可が出ず、いまだに仕事に戻れず他の仕事もなく無職となっています。
イスラエル政府はインドなどからの外国人労働者を16万人増やす、と言いましたが、実際に新たに働きにきたのは約8万6千人でした。以前から働いていた外国人労働者11万人の多くは介護職で、いま建設業での労働力不足が深刻になっています。
私は行きの飛行機で、お揃いの分厚い書類のファイルを持った20人以上の外国人労働者の方たちと一緒でした。
<参考資料>独立労組マアンの報告書
進む併合
ヨルダン川西岸地区は、パレスチナ自治政府管轄のA地区含めてもはや「自治区」とは名ばかり。A地区のナーブルスも毎晩のようにイスラエル軍がやってくるので、夜8時には人が少なくなります。
入植地が拡大し、入植者用の道路も増えて、パレスチナの町や村は分断され、狭い場所に押し込められています。
2025年秋に、入植者の若者がヨルダン川西岸地区、ラマッラーからナーブルス間の幹線道路(60号線)の道路の両脇に、40mおきに2000本のイスラエル国旗を立てました。
この道路は、パレスチナ人もイスラエル人入植者も利用します。パレスチナのセルビスで道路を走っていても、イスラエル国旗だらけで、入植地だらけ、見えるのはイスラエルのバス停と兵士。ときどきパレスチナの村が見える。ここはどこの国なんだろうと思わせられます。
いま入植者とパレスチナ人と両方が使っている道路もありますが、将来的には完全に分けるのではないか、とも言われています。
映画「パレスチナ36」の上映
36は1936年のこと。第一次世界大戦後、オスマン帝国領が分割され、パレスチナはイギリスの植民地となりました。そのイギリス委任統治時代にヨーロッパからパレスチナへのユダヤ人入植者が倍増したため、パレスチナ人がイギリス軍に対して立ち上がりました。その歴史的な闘いに加わっていく若者たちを描いている話題の作品。
監督はパレスチナ女性のアンマリー・ジャシルさん。“Salt of this sea” “When I saw you”も撮っている著名な監督です。
1月にはエルサレムやヨルダン川西岸地区、イスラエル領内のパレスチナ町村の各地で上映中で、東エルサレムのヤーブース文化センターではチケット完売が続く人気でした。
しかし、1月22日にヤーブース文化センターにイスラエル警察が踏みこみ、上映禁止が言い渡されました。エルサレムとイスラエル全体で上映禁止となったようです。
私は後日、ラマッラーの映画館で見ましたが、イギリスの責任がしっかり描かれている印象を持ちました。闘いの中で殺されていく人たちのことも描かれており、映画は1936年の出来事ですが、パレスチナの人たちの闘いはずっと続いていることを考えずにはいられません。(世界が見捨てたまま)いつまで彼らが闘わなければいけないんだろう、と辛い気持ちになりました。
映画館で一緒になった、パレスチナ人の父子と話をしました。お父さんは「自分たちは知っている出来事だから、パレスチナの外の人にこそ、この映画を見てほしい」と言っていました。
この映画は2025年開催の第38回東京国際映画祭でグランプリを受賞しましたが、日本では公開予定がありません。
日本大好きイスラエル人
「え、日本から来たの? 日本は美しい国なんだってね。いつか行きたい!」と、イスラエル軍検問所で、重武装の若い女性兵士たちに無邪気に言われました。
日本の風景写真や動画が出回っているようで、他にも「11月に日本に行ってきたばかり」「今度2月、梅の季節に日本に行くの」というユダヤ系イスラエル人にも出会いました。
いままでも検問所でイスラエル兵に「アイ・ラブ・ジャパン!」と言われて気まずい思い(パレスチナ人と一緒に列に並んでいますし、兵士に向かって「私はイスラエルは嫌い」とは言えないので)をしたこともあります。
イスラエル人観光客が、日本でイスラエルによる攻撃反対の張り紙やスタンディングを見かけて、話しかけたりすることもあるようです。中には激昂する人もいるようでそれは困りますが、いろいろな考えに触れる機会になって欲しいと思います。
「暴力」問題」
イスラエル内のアラブ・パレスチナコミュニティ内部に違法な銃が蔓延し(一部はイスラエル兵士からの横流し)、銃やナイフによる犯罪が続いています。2025年には252人が殺害され、2026年は2月上旬までに42人が殺害されました。
アラブ・パレスチナ人のマフィアのような犯罪者集団が、武器や麻薬を取引し、恐喝を行い地元の店舗や会社から「みかじめ料」を巻き上げています。犯罪者集団同士の抗争も起きています。日中堂々と犯罪が行われ、子どもたちの通学さえ危険な状況ですが、イスラエル警察は動きません。ユダヤ系イスラエル人の殺人事件は65%が解決しているのに、アラブ・パレスチナ人の場合は10%未満、アラブ人同士が殺しあっているのはかまわない、と言わんばかりです。
イスラエル政府は、ガザ地区、西岸地区への占領政策とセットで、意図的にこの「暴力」を放置することでイスラエル内のパレスチナ人コミュニティを弱体化させ疲弊させている、と考えられています。
デモに参加
昨年から各地で、イスラエル政府に対する抗議デモが続いていましたが、1月31日に「イスラエルのアラブ市民のためのハイフォローアップ委員会」(町村のコミュニティをまとめる組織)の呼びかけで、大規模なデモがテルアビブで行われました。アラブの町村各地から人々が集まり、これにユダヤ系イスラエル人左派の人たちが加わりました。全体で参加者は約4万人。私もシンディアナやマアンのメンバーと一緒に参加しました。
主催者側の判断で今回はイスラエル国旗もパレスチナ国旗も政党の旗も禁止されました。
悼みと抵抗の象徴として黒い旗が掲げられ、「ARAB LIVES MATTER(アラブ人の命も大事だ)」「もうたくさんだ!」「イスラエル警察は仕事をしろ!」というようなプラカードがあり、日本の漫画ONE PIECEの黒い海賊旗も見かけました!(この海賊旗は「抵抗」「不屈」「自由」などの象徴としアジアやヨーロッパのデモでも掲げられています)
デモの最後は広場でリレートークが行われましたが、政治家のスピーチはなし。犠牲者の母親や活動家、知識人の発言が主にアラビア語で行われ、部分的にヘブライ語への翻訳がありました。
もともとイスラエル警察はアラブ・パレスチナ人にとって抑圧者なので、「イスラエル警察は犯罪者をきちんと取り締まってくれ」と要求するのは複雑なことです。しかし、犯罪者集団を誰もコントロールできなくなっている状況をどうにかしたい、というのは、本当に切実な思いなのです。そのためにはユダヤ系左派の人たちとの連携も必要…という新しい動きでした。
アラブ・パレスチナ人や反シオニストのユダヤ人左派にとって、中道左派の人たちとどう連携するのか、しないのかは意見の分かれる問題です。
今年は国会(クネセト)選挙があります。イスラエルは、完全比例代表選挙で少数政党が乱立しやすく、必然的に連立政権となります。「ネタニヤフ政権を倒すにはアラブ政党も協力すべき」「中道左派はしょせんシオニスト左派なのだから協力できない」「いまこそアラブとユダヤの平等な新党が必要だ」「一緒の政党をつくるならアラブ・パレスチナ人主導のものでなければダメだ」など様々な意見があります。
「パレスチナフェスタ2026~子どもたちの平和のために~」
日時:2026年4月11日(土)
飲食・マーケット 11:00~18:30 ステージプログラム 13:00~18:00
会場:池袋西口公園野外劇場グローバルリング シアター
(東京都豊島区西池袋1-8-26、池袋駅西口すぐ、東京芸術劇場そば)
主催:認定NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン *入場無料
食や手仕事、音楽、ダンス、映像などを通じてパレスチナ、中東世界への理解を深めるイベント。パレスチナ・オリーブも出店・販売します。オリーブオイル、オリーブ石けん、刺繍製品のほか、今回の訪問で購入したFOVEROの缶バッジ、ヘブロンのバッグ等も特別に販売します。
「パレスチナ訪問報告 2026」―パレスチナの暮らしを知っていますか?―vol.10
報告者:皆川万葉(パレスチナ・オリーブ)
日時:2026年5月29日(金)19:00~20:30
会場:book cafe 火星の庭(宮城県仙台市青葉区本町1-1-14-1F tel 022-716-5335)
参加費:1500円+ドリンク代
要予約:[email protected] *お名前、参加人数をお知らせください
主催:book cafe 火星の庭、パレスチナ・オリーブ
2025年秋頃から外国人(ジャーナリストや人道支援関係者など)に対してイスラエルが入国拒否することが増えているという噂を聞いていたので、いつも以上にイスラエルに入国できるか不安でいっぱいでした(イスラエルに入国しないとヨルダン川西岸地区にも行けません)。私も入国できるかどうかはイスラエル次第。パレスチナの人たちは日常的に理不尽に移動を制限されています。
人権や国際法は、もう世界に存在しないかのようです。イスラエルは以前から、政治指導者の暗殺、学校・病院への爆撃、住民追放をパレスチナやレバノンで行っています。いつでもどこでも何をしてもいいと思っているのでしょう。イスラエルがやっているんだから、アメリカもやっていい、とばかりのベネズエラ攻撃にイラン攻撃。あまりにひどいことが矢継ぎ早に起きていくので、一つ一つのことがきちんと検証されずに過ぎさってしまっていると感じます。でも、どこかで止めなければ、タガが外れた世界がもっと広がってしまう。
日本も無関係ではありません。日本政府は公的年金によってイスラエル国債や軍事企業の株に約1兆円の投資をしています。イスラエルから攻撃用ドローンを購入することは止められましたが、2024年以降だけでもイスラエル製の武器・装備品を計241億円分購入。2026年1月には自民党の安全保障調査委員会と超党派の国会議員団のイスラエル訪問(軍事企業を視察、ネタニヤフ首相を表敬訪問)と、茂木外務大臣のイスラエル、パレスチナ訪問がありました。3月にはアメリカ、トランプ大統領の元政策顧問で、パランティア社のピーター・ティール氏が来日して高市首相を表敬訪問!(この会社でつくられた監視システムが、イスラエルの軍事攻撃やアメリカの移民取り締まりで使われています。1月には小泉防衛大臣がワシントンで同社を訪問)。これからもしっかり見て声をあげていきたいと思います。
